5月末に実施したSOX法に係わる訪米調査の結果を、6月のコラムに引き続き報告します。6月のコラムで取上げた訪米調査のサマリも参照されるようお願いします。 7月のコラムには、日本版SOX法とも言うべき金融商品取引法が7月に成立したため、急遽日本版SOX法をとりあげました。
SOX法制定の引き金にもなったエンロン社の元幹部の有罪が決まりました。5月25日、正に訪米最中にケネスレイ元会長が証券詐欺等で、ジェフリ・スキリング元CEOがインサイダ取引等で有罪との評決がくだされ、大々的に報道されていました。米国の法律では複数の量刑が累積加算されるため、ケネスレイ元会長が47年、ジェフリ・スキリング元CEOが185年の量刑の評決があったようです。また元CFO(財務担当重役)は既に禁固10年で確定済みであり、ワールドコムの不正会計では既にバーナード・エバース元CEOに禁固25年の刑が下っています。さらにシティグループやJPモルガン・チェースなどエンロンの経営実態を正しく伝えなかった大手金融機関が投資家に対して72億ドルを支払うことで和解しています。いずれにしても、重大な経済犯罪には、重罪が課せられる時代になってきたといえます。
404条対応(有効な内部統制構築)に費用がかかりすぎたといわれています。大企業では2004年度対応で10億円以上かけたところもあったようですが、平均的には5億円近くのコストをかけました。2年目は10%程度減ったと伝えられていますが、依然として多額の費用を要しています。その中にあって、監査費用が極めて小さい例として、日曜大工販売のHome Depoがあげられています。Home Depoでは、ビジネスプロセスが単一であるうえ、そのプロセスが中央集権化されているうえ、自動化が進んでいるためとしています。<KPMGより>
SOX対応コストの内訳を見ると、外部コンサル(法律事務所、会計事務所)及び監査稼動に多額の費用が費やされていることがわかります(図参照)。2年目は、外部コンサル費用は減少したものの、内部稼動は依然として高い水準にあります。次年度以降自動化を含むIT投資の検討が始まると、今後IT投資が伸びてくることが想定されます。事実米国では、SOXの議論は財務からITの議論に移ってきているようです。

法の遵守にかかる企業のコスト負担が大きく、経済界に規制の行き過ぎを指摘する声があがており、証券取引委員会(SEC)や公開企業会計監査委員会(PCAOB)でもガイドラインを示すなど新たな動きを見せております。
SEC,PCAOBはSOX法適用後、種々のガイドライン等を出しておりますが、法律の運用が固まってくるのには、まだ時間がかかりそうです。以下には、OECD,PCAOBのSOX法適用に当たっての動向を示しています。
SEC小規模公開企業問題諮問委員会では、小規模な企業に対するSOX法適用の緩和を提案(2006年4月)しましたが、内部統制報告制度見直しラウンドテーブル(2006年5月10日)で、SEC委員の反対によりこの緩和案が撤回されましたが、小規模企業に向けては新たなSOX対応ガイドラインが示されていくようです。
<撤回された見直し案>
<撤回の背景>
次回は第3弾として、SOX対応企業の監査を手がけた大手監査法人の報告や金融機関の動きを中心に説明します。
東京大学
国際・産学共同研究センター
客員教授
林 誠一郎